愛本新発電所

愛本新地区の着工と小水力発電

  昭和11年(1936)に発電が始められた愛本発電所において、愛本新用水への分水は同発電所の水槽から直接落下させる方式で行われていた。落下地点から約2キロメートルの間は山腹を縫った開渠の水路であり、豪雨により軟弱な山腹は崩壊し溢水する災害が多かった。特に昭和40年には用水下を通る県道を埋め、人家にまで被害が及んだ。この蟹ノ沢と呼ばれる軟弱な地帯を通らずに明日(あけび)の平野部までトンネルで通水する方法での改修を要請した結果、昭和54年4月に県営かんがい排水事業として採択され、着工することとなった。

 また、事業によって生ずる水路の高低差を利用して自家用発電所を建設する構想が持ち上がった。昭和63年には北陸電力との受給交渉が成立し、同年中に農業用および発電用の水利権が許可され工事認可も得て、県営事業として続けて施工された。平成2年(1990)1月26日、愛本新発電所運用開始式および県営かんがい排水事業愛本新地区の完工式を挙行し、念願の愛本新用水での発電所が生まれた。発電所は愛本新用水土地改良区で管理して、その恩恵が土地改良施設や用水路の維持管理費に充てられている。

 このような小水力発電は、無駄のない水利用とCO2を排出しないクリーンエネルギーとして奨励されている。平成22年6月からは、黒部市により宮野用水を利用した小水力発電所の建設が本格的に動き始めた。23年4月に着工し翌24年4月に運転開始の予定である。.この宮野用水発電所は、愛本発電所の水槽から一気に流れ下った水が、標高137メートル地点で標高146メートルまで押し上げられて、逆サイフォンの途中で水車を回し発電するという全国的に珍しいものである。

 黒部川沿岸用水歴史冊子編さん委員会:「扇状地に広がる水の恵み 黒部川沿岸用水」(平成23年3月発行)よりパンフレット表紙 発電所

愛本新発電所パンフレット

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