フォーラム・シンポジウム報告

令和7年度全国棚田(千枚田)連絡協議会総会・第30回全国棚田(千枚田)サミット

 第30回全国棚田(千枚田)サミットが、令和7年11月1日~2日にかけ ~棚田でウエル 想いと願いをコメて~ をテーマに、大分県別府市にて開催され、全国から約1,000人の参加がありました。
 サミットに先立つ10月31日には、全国棚田(千枚田)連絡協議会総会があり、令和6年度事業報告および決算、令和7年度の事業計画及び予算案、次期サミット開催地、役員改選、棚田地域振興の推進に関する要望骨子案の議案について審議され提案どおり了承されました。

メイン会場
メイン会場

 今回の開催地、上田市は5箇所の棚田(天間棚田、堂面棚田、内成棚田、大所棚田、東山の棚田群)がつなぐ棚田遺産に選定されています。会場の別府国際コンベンションセンター前の芝生広場では、青空のもと棚田5箇所の魅力を発信するマルシェも開催され、棚田米の試食・販売やもちまきやステージイベントなど大勢の方で賑わいました。

 地元の子どもたちによるオープニングイベントの後、開会式が行われ全国棚田(千枚田)連絡協議会長(長野県上田市)ら関係者から挨拶と歓迎のお言葉がありました。

メイン会場
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 次に内成棚田の会の後藤利夫氏から「内成棚田の保全維持活動について」と題した事例発表がありました。実際に現場で作業されたている方からの忌憚のないお話を聞き、あらためて棚田保全活動について考えさせられました。

 30回を記念したシンポジウムでは、小説家の司馬遼太郎が同期会の席で棚田を絶賛されたことが町おこしになると、サミット開催の発端となったとの逸話や、第1回開催から多大なご尽力をされてきた早稲田大学名誉教授の中島峰広先生から、今までのサミットを振り返りながらの講演もあり、参加者は熱心に聞き入っていました。

メイン会場
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 午後からは4つの会場に分かれて分科会が行われ、第4分科会では「スマート農業で次世代に残したい~農の豊かさ」をテーマに、千葉大学大学院園芸学研究院の濱 侃助教をコーディネーターとし議論が行われました。鹿島建設株式会社技術研究所の山田順之氏から新潟県十日町の棚田での実証実験について発表がありました。棚田地域では畦畔法面が広く危険な箇所が多く、小規模で分散している農地への移動負担があるため農業者の安全確保、安否確認が求められるが、携帯電話網の圏外であるなどの特有の問題に対して、太陽光発電で動作する低出力無線ネットワークなどを基盤に水位監視や高齢化する農業者の見守りなどをICT技術で支える試みが一定の成果を得ているとのことでした。山田氏の一般の認識である大規模経営を支えるスマート農業と同時に地域の風土を維持する農の営みを支える基盤技術としてのスマート農業を目指しているとのことばが印象に残りました。続いて、千葉大学大学院園芸学研究院の大石耕太郎氏の気象条件による米の食味の関係解析結果の発表がありました。
 今後スマート農業を活用することにより人手不足を解消し、豊かな棚田と地域の風土を次世代へつないでいくことについて考えさせられました。
 2日目には、実際に棚田を巡る現地研修会が行われ、市街地から近い堂面棚田、内成棚田などで実際の保全活動について担当者から説明を受けました。

メイン会場
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 次回、第31回全国棚田(千枚田)サミットは、令和8年11月14日~15日に静岡県浜松市にて開催予定です。